2015年6月1日月曜日

一色

この世界を彩り続けている様々な色。

新緑の緑や紅葉の赤。
見惚れてしまうような夕焼けの橙と、柔らかで薄い水色の春の空。
うっすらと紫がかった薄暗い闇は、深い藍の大海原を抱えている。

あなたの周りに溢れている全ての色がひとつになると、どこまでも優しい白になる。



誰もがそこから生まれてくる。
白の色から飛び出して、自分の色を探すために。

その一色を探すために、あなたは今そこにいる。

どんな時に喜んで、何に怒りを覚え、哀しみを見つめて流す涙に何を思い、そして何かがあなたを笑顔にする。

そのひとつ一つを知るためだけに、今、あなたは生きている。
そのひとつ一つが、あなたの一色になっていく。

でも時に、人は自分の思いに焦りを感じ、伝えられない思いに孤独をみて、感じる不安に憤りを覚えながら、無力な自分に絶望してしまうもの。
辛くて、苦しくて、それでもそこから逃げられなくて、下を向き、希望も未来も感じられず、この世界の全てが信じられなくなってしまったら。

そんな時は思い出して。

ここで私が、あなたを信じて待っている。

あなたが泣くなら、私も一緒に泣くから。
あなたが祈るなら、私も祈る。
あなたが自分を信じられなくなった時には、私はこう言い続けるよ。

「あなたは素晴らしい」って。


~小説 七色より~

『「ああ。ヒカルはさ、色々なことを考え込んでしまうんだ。傍から見たらちっぽけな悩みだとしても、彼女はいつも真剣に考えるんだ。実はさ、メールも電話も全く繋がらない時がたまにある。もちろん、家に行ってドアをノックしたって、そういう時は絶対に出てきてはくれない。自分以外の全てを遮断してしまうんだよ。自分の色んな思いを抱えきれなくなるんだろうな。時々さ、「自分が消えてしまえばいい、もう消滅してしまいたい」って、そう思ってしまうみたいでね」

「全く想像が出来ないな。明るくて元気なヒカルしか知らないから驚きだ。彼女、その……大丈夫なのか? 精神的にかなり不安定な感じだが」

ジョシュアは小さく眉を動かすと、ゆっくりとした口調で話を続けていく。

「ああ、君の言いたいことは大体わかる。僕もそこには十分注意はしているよ」

「ヒカルは君に、何も言わないのか? 君を頼ったり、大声で泣いたりすればいいじゃないか」

「僕もそう思ってたよ。なんで何も言ってくれないんだ、どうして心を開いてくれない、お願いだから頼ってくれ、そんなに僕は頼りないのかって。何度も何度も彼女に言ったし喧嘩もした。でも最近さ、それは違うって気づいたんだ」

「違う? 何が。君は彼女を受け止める度量くらい持っているだろう?」

「ああ、もちろん。あばらが折れるまで胸を叩かれたって僕は平気さ。でも違うんだよ。君の言うとおり、自分の気持ちを吐き出せば、少しは気も楽になるだろう。多少は心にも余裕が出来るかもしれない。気分転換の上手い人なら、それだけで悩みを吹き飛ばせるのかもしれないな。でも彼女は、そういうことがちょっと下手くそなんだ。人よりちょっと深くまで考えてしまうのさ。その時ヒカルはね、自分の心の中にいる、小さくて膝を抱えて泣きじゃくっている自分と向き合っているんだ。そして、そんな自分に勝てるのは自分自身だけだってちゃんとわかっている。自分と必死に闘っているんだ。だから、彼女はいつも一人で戦うんだよ。やっと気づいたんだ、最近ね」

「近くに居る君がそう言うんだからそうなんだろうが。でもそれじゃ、君は辛いだけじゃないか」

「いいんだよ、それで。そこに気づくまでは辛かったけどね。だってさ、自分と精一杯向き合えるなんて凄いことだろう? 立派じゃないか。僕は、そんな彼女を誇りに思うよ。誰だって、自分の醜い部分や暗い部分には目を背けたくなるのにさ、それでも彼女は絶対に目をそらさない。自分を偽ることもしないければ、虚勢をはることもしない。悩んでいる自分の姿をありのままに、そのままを他人に見せる強さを持っているってことなんだ。決して甘えてるわけじゃない。真正面から自分と向き合っているからこそ、胸を張って堂々と悩んでいるんだよ。立ち直るまでに、ちょっと時間は掛かるけどね。そんな彼女に僕が何を言える? 頑張れって? 彼女は十分頑張ってる。それ以上に頑張れることなんて、この世の中には存在しない。僕が出来ることはさ、そんな彼女の心から自分の心を離さない、それだけだ。暗闇から這い上がってきた彼女を、おかえりって笑顔で出迎えてあげる。その為に、僕は居るんだ」』

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